2009年7月29日水曜日

THE DAVIS SISTERSとRAY CHARLES



私は古くてシンプルなヴィンテージゴスペルが大好きです。いわゆる90年代以降のコンテンポラリーなサウンドも好きなのですが、音が懲りすぎていて格好良すぎたりする。なによりもクワイアスタイルが中心なので、自分の好みから少しづれてしまうのです。また、実力的にも一世代昔のシンガー達の方が実力が上のように聞こえるのは私の偏見か?  
では?私の好きなゴスペルのスタイルは何か?男性カルテットやCLARA WARD&WARD SINGERSのような古い女性グループのスタイルです。特に女性グループには特別な思い入れがあります。 特にTHE DAVIS SISTERSというグループは堪らなく好きなんです。日本のゴスペルファンには余り知られていないグループかも知れません。なので紹介させていただきたい。  
THE DAVIS SISTERS。彼女達はRuth Davisを中心に結成された姉妹グループとしてフィラデルフィアで1947年にその活動をスタートさせます。男性カルテットとして定着しつつあった礼拝の熱狂を取り入れた「ハードカルテット」のスタイルを最初に体現した女性グループとして記録されている。  
50年には後にTHE CARAVANSに加わるImogene Greenが加入。Imogene脱退後はJackey Verdellが加入。彼女は後にソウルシンガーとしても活躍しDECCAレーベルにHi録音の楽曲を残していますね。ゴスペル界に復帰後はコンスタントにアルバムを発売しながら華やかに活動しています。   Ruth Davisは何故?グループを結成したか?これは何かお決まりのようなサイドストーリーなのですが・・一応書いておきます。  
雨の日にRuth Davisは家路へと向っていました。そこへ大型トラックが猛スピードで走ってきました。慌てたRuthはトラックの目の前に滑って倒れこんでしまう。間一髪!!のところを何者かに引き上げられて助かったとのこと。その方にお礼を言うために振り向いたところ、そこには誰もいなかった。その瞬間Ruthの体を聖霊が包み込み神様への感謝で満ち溢れたと言います。この経験がゴスペルグループを結成するきっかけになった出来事だそうです。Al GreenやLittle Richradのゴスペル転向のサイドストーリーなんかもそうですがお決まりだな。  
THE DAVIS SISTERSの特筆すべきところは、そのコーラススタイルであります。リードヴォーカルを前面に立ててコーラスは後ろに引っ込んで引き立て役に徹するスタイルをとりました。そのため通常のカルテットスタイルよりもよりクワイアのように聞こえる場合が多いです。  
このスタイルに感銘を受けたのがかのRAY CHARLESだ。彼女達のコーラススタイルを自身のグループRaelletesのスタイルとして導入していくのです。 RAY CHARLESが彼女達に一目置いていたのは1970年にRuth Davisの葬式でRAYの奥さんが歌っていることからもうかがい知れます。  
THE DAVIS SISTERS・・彼女達のような偉大なパイオニアの存在を今のゴスペルファンも知って欲しいものです。

2009年7月21日火曜日

東京Bro.Taisuke Gospel Choir

 私は、ゴスペルが好きで聞くだけにとどまらず、実際にクワイアに属し歌わせてもらっています。まぁ下手の横好きとは良く言ったもので歌唱力は聞かせられるものではありません。ただ好き!ただ賛美したい!それだけの理由でクワイアに参加しています。「ただ賛美したい!」これこそがゴスペル音楽の真髄なのではないかと思います。
 黒人教会の礼拝に参加するとみんな礼拝中に手を高々と上げて時には涙を流しながら「ハレルヤ!」「サンキュー!ジーザス」と叫び続ける光景を目の辺りにします。感極まって床に倒れこむ人もいるほどです。日常の苦しみ、悲しみ、喜び全てを神様の前にさらけ出し、感謝の気持ちを体全体で表現するのです。そしてまた新たな一日を生き抜くエネルギーをチャージしていく場所。それが彼らにとっての教会なのです。そんな場所で生まれたゴスペルソング。「ただ賛美したい。」「ただ感謝したい」そんな心の渇きを満たすために歌われる強烈な神様へのメッセージソング。それがゴスペル音楽の根本にあるのでは?と思っています。




  さて、前置きが長くなりましたが、私の所属クワイアについて紹介させていただきます。私は東京Bro.Taisuke Gospel Choirというグループで歌わせていただいております。
 うちのクワイアはルイジアナの黒人教会にて音楽役員として活躍していたBro.Taisuke氏が立ち上げたクワイアです。2004年に帰国して地元新潟でゴスペルワークショップを開催したのが始まり。2006年には東京でもクワイアが立ち上がり現在の「東京Bro.Taisuke Gospel Choir」に至ります。
 うちのクワイアは個性という面ではどのクワイアにも見られないカラーを持っています。Bro.Taisuke氏の常人離れしたユニークなキャラという面もあるのですが、何よりも音楽性がよそのクワイアには無いものがあります。
 都内で活動しているクワイアの大部分がいわゆるコンテンポラリーゴスペルと呼ばれるゴスペルを取り上げて歌っています。主に90年代以降のKirk FranklinやIslarel&New Bleedなんかの曲が取り上げられることが多い。
 一方私達のクワイアは奴隷時代から伝わる黒人霊歌(ニグロスピリチュアル)や黒人教会で古くから歌い継がれているスタンダードを中心に取り上げて歌っています。古い伝承歌のほかにはJames ClevelandやMilton Brunsomといったマスクワイアスタイルのルーツに当たるような先人達の曲を多く取り上げて歌っています。
 そこにルイジアナの黒人教会で培ったBro.Taisuke氏のエッセンスが散りばめられ非常に熱い空間が作られて行きます。練習とライブの区別はありません。練習でもエネルギー全開で歌いきります。汗かきます。声量の限界まで歌います。完全に体育会系のノリです。
 前置きで書いた「ただ歌いたい!」「ただ賛美したい!」そんな黒人教会の空気がフラッシュバックするリハーサルです。
 ルーツ音楽としてのゴスペルを探求したい方、よそとは違う音楽性のゴスペルを歌いたい方は是非!うちのクワイアをおすすめします。またストレス解消、ただ大声出したいという理由の方も大歓迎!
 汗だくのリハーサルの後には必ず打ち上げがあります。打ち上げを楽しみに来る方も歓迎します。

是非!どなたでも気軽に遊びに来ていただけたらと思っております。


↓がmixiでの紹介文

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???What's about Bro.Taisuke Gospel Choir???  


 ~ここが黒人教会であるかのような錯覚に陥る~ そんなゴスペルクワイアは東京で、いや日本中どこを探してもないでしょう。 ニューオリンズの黒人教会で、現地人にゴスペルを教えていた”The Real Thing" Bro.taisukeがコンダクトするアメリカ南部の源流に忠実な、オールドスタイルゴスペルを中心にコンテンポラリーまで、歌っているクワイア、それが東京Bro.taisuke Gospel Choirです。 ※(Choir クワイア:聖歌隊) Bro.taisukeの発想のままユニークな選曲とわかりやすい指導で、ゴスペル初心者も楽しく歌えます。気持ちいい三声のハーモニーの中で、自分の身体が共鳴する心地良さをぜひ体験してみてください。 ~HISTORY~ ニューオーリンズの黒人教会で、現地人にゴスペルを教えていた ”The Real Thing" Bro.taisuke。故郷である新潟市、そして隣接する長岡市にゴスペルクワイアを起ち上げました。 そして2006年春、東京でもワークショップを開始。 現在の東京Bro.taisuke Gospel Choirに至ります。 【Bro.taisuke オフィシャルHP】 http://spiritofsouth.oops.jp/ http://spiritofsouth.oops.jp/tokyogospelentrance.htm


2009年7月20日月曜日

KUM BA YA


「KUM BA YA」という曲をご存知の方はいらっしゃいますか?ゴスペルファンにはKurt Carr Singersで御馴染みでしょうか?
 一般的にこの曲が世間に知られたのは1962年に「ドナドナ」や「勝利を我らに」などを歌いフォークの女王として知名度があったジョーン・バエズのヒットによることでしょう。彼女が歌ったこのKUM BA YAという不思議なタイトルの曲は公民権運動や反戦運動の広がりとともに世界中で歌われるようになりました。
 「KUM BA YA」という曲は古くから黒人社会に伝わるいわゆるニグロスピリチュアルです。過酷な生活を強いられた奴隷生活を乗り切るために彼らは日常生活の様々な事を歌にしてきてましたが、そうした歌のいくつかは口承で先祖代々伝わりトラデショナルソングとして今でも歌い継がれています。「KUM BA YA」というのはそんなスピリチュアルの一つです。
 「KUM BA YA」というのは「COME BY HERE」という意味と同じでスワヒリ語などと混じって作られた造語という説があります。なので「KUM BA YA」は「COME BY HERE,LORD」というタイトルで歌われることも多いです。古いゴスペル系のレコードなんかには「COME BY HERE,LORD」というタイトルで収録されているのを実に多く発見します。
 「KUM BA YA」はつまり「主よここに来て下さい」というすがるような祈りの歌なのです。過酷な奴隷生活とは言わないまでも、我々も精神的に疲れたときや壁にぶつかったときに神様に救いを頼みたくなるときもあるかと思います。
「KUM BA YA」というのはそんな祈りを込めた歌なのでは?と思います。
 Kurt Carr Singersのヴァージョンは90年代後半なので思いっきりモダンなアレンジがほどこされています。同時代のR&Bとなんら大差ないです。まるで夜の首都高速をドライヴしている雰囲気です。この曲が収録されている彼らのアルバムは超名盤なので是非!聞いてみてね

Hallelujah,I Just want To Praise The Lord



  そういえば、ふと思い出した。今年の初めに日野市のゴスペルワークショップで「Hallelujah,I Just Want To Praise The Lord」という実に軽快な曲を歌いました。この曲は誰の曲だっけ?と引っ掛かっていました。

 さっきレコードを整理していて思い出したのですが、そうです、あのAL GREENの曲です。70年代に「LET'S STAY TOGETHER」などのヒットを連発してソウルミュージックの世界でスーパースターになった彼が、紆余曲折を経て80年代以降はゴスペルミュージックの世界へ復帰。ゴスペルシーンでもグラミー賞を獲得するなど大きな影響力を持つシンガーとして活躍していくのです。
  そのAL GREENのゴスペル時代の代表曲がこの「Hallelujah,I just Want To Praise The Lord」です。しかし!ソングライターにはもう一つ気になる名前が・・。あのMoses Dillardの名前があるではないですか!
 彼はこの曲が収録されているアルバムでギタリストとして参加しているし、Shirley CaserやWilliam Brothersが参加しているFisk Jubilee SingresのトリビュートLPのプロデュースをしているのもMoses Dillardだ。
 ここで、Moses Dillardと言われてもマニアックなソウルファンで無い限りピンとこないかもしれませんね。
 Moses Dillard。自身も60年代からシンガーとしてコンスタントにシングル盤をリリースしていくのですが、中でもMoses Dillard&Tex Down Displayとして残したレコードは素晴らしい。Shout盤やCurtom盤は良く聞いたものです。唯一のLPは数十万のプレミアが付くレコードとしてオークションなどで取引されている。この頃はリードシンガーに若き日のPeabo Brysonを立てていることでも有名。
 また、相棒のJesse Boyceと共に裏方の活躍も多く。Bill Brandon Loraine Johnsonといったシンガー達のLPなどもプロデュースしている。
 その彼も80年代はゴスペル界で活躍したのでしょうか?この時代のゴスペルのレコードの裏方で良く名前を見かけます。
ゴスペル界に復帰したAL GREENとソウル界の渋めな裏方Moses Dillardのコンビで作られた「Hallelujah,I Just want To Praise The Lord」という曲が日本のゴスペルクワイアでも良く歌われていることを知るソウルファンも少ないでしょう・・。

ソウルミュージック離れ?

ソウル離れしているのですか?と聞かれたので更にゴスペルについて書いてやる!(笑)・・・というかソウルのことはもう数多くの人が書きつくしているので今更私が書いたところで面白く無いでしょう。
 また、ソウルファンは一般的にカルテット中心のヴィンテージゴスペルしか聞かない傾向があります。多くのソウルシンガーがカルテット出身だし、音楽的にも直接的なルーツになっているからでしょう。  でも60年代以降のマスクワイアスタイルのゴスペル、ソウルミュージックと密接に繋がった70年代、そして現在のコンテンポラリーゴスペルの中にも素晴らしいシンガーは山ほどいて、ソウルファンも決して無視できないと思えるのです。でも個人的にヴィンテージゴスペルはたまらなく好きなのですが・・。  

    ところで、久しぶりにNew York Restration Choirのアルバムを引っ張り出してきました。そう、Donnie Mcclurkinが90年代にディレクトしていたマスクワイです。 このアルバムのジャケにはこのクワイアに所属していた若かりし頃のKelly Priceの姿を見ることができますよ。声は確認できませんでしたが。  

 アルバムの内容は平均点レベルといったところか、ダイヤの原石と言ったところでしょうか?  すぐ見つかるので機会があったら入手してみてね。

Dorothy LovecotesとTPW




   作年末に参加したワークショップで「ゴスペルの歴史」なる分科会に参加しました。ゴスペルマニアとして有名な古澤さんという方が音源を用いながらゴスペル音楽の成り立ちについて説明していく授業内容だったのですが、そこで、現在有名なシンガー達の若い頃参加していたグループやクワイアのレコードなんかを見せていただきました。  Hezkiah WalkerやRichard Smallwoodといったシンガーのブレイク前の姿を拝見させていただきました。 その中で個人的に関心を抱いたのは日本ではKirk Franklinより人気があるかもしれない(笑)?アラバマのTPWのメンバーとして来日を繰り返している驚異的なソプラノシンガーCleo Kennedyでした。 彼女はあの伝説的なグループDorothy Lovecoates&The Original Gospel Harmonnetesのメンバーだったこともあり、彼女が参加したLPのジャケを拝ませていただきました。  
Dorothy Lovrcoatesという名前を現在の日本のゴスペルファンはどれだけ知っているかは解りませんが、ゴスペルの歴史においてあのMaheliah Jacksonを凌ぐ知名度と影響力を持っていると言って良い存在でもあります。彼女がソウルシンガーに転向していたらAretha Franklinを軽く超えるシンガーとなっていたと言われるほど黒人社会でリスペクトされていたシンガーであります。  幾度と無く世俗音楽への転向の話が舞い込んできたそうですが、信仰を貫き通すためにゴスペル音楽から離れることのなかった強い信念の持ち主でもあった。 ソングライターとしても数多くのスタンダード曲が彼女の手によって書かれている。 余談ですが、DIANA ROSS&THE SUPREMESの「恋はあせらず」(You Can't Hurry Love)という曲はDorothy Lovecoatesの「You Can't Hurry God」をヒントにH-D-H(モータウンのソングライターチーム)が書いている。  
 その偉大なDorothy Lovecoatesのグループに在籍していたまだ十代だったと思われるCleo Kennedyの姿を拝見させていただきました。TPWがDorothy Lovecoatesの曲を数多く取り上げるのは彼女と同じアラバマのグループであること、そしてCleoが関わっていたことが理由なのでしょう。
 そのCleoさんですが、今日CDを整理していたら思わぬところで彼女のクレジットを発見しました。マスクワイアスタイルのゴスペルを大胆に導入して近代ゴスペルを築き上げ「ゴスペルの王様」と呼ばれ続けたJames Clevelandが83年にリリースしたLP「It's a New Day」にCleo Kennedyがソロを取っている曲が2曲も収録されていました。James Clevelandがディレクトしていた幾つかのクワイアの中でも知名度、実力ともに高いSouthern California Community Choirのメンバーとして参加していたそうです。 かなりの高音域のソプラノスタイルで歌い上げる彼女の歌声を確認しました。  
 しかし、色々な人から話を聞いたり、レコードやCDを地道にコレクトしているとこうゆう発見があったりするから面白いですね。